特別展『ガウディ×井上雄彦』公式ナビゲーター  

建築家 光嶋裕介氏に話しを聞く!!

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特別展「ガウディ×井上雄彦」2014.7.12 – 9.7 公式ナビゲーター  光嶋裕介氏

 

 

人として、建築家としてのガウディの魅力——

 

ガウディに関しては、いつか鳥居徳敏先生とお話ししたいくらいなので、まだまだ自分の勉強レベルですが、やっぱり一番共感するのはストイックさですかね。もちろん、ガウディに会ったことがないので、人間ガウディを知りませんけど、建築にも十分にそれは現れているんですよね。本来、建築家というのは、時間を先取りして、未来の姿を提示する仕事だと思うんです。つまり、更地に対してデザインを提示して、「ここにこんな建築が建ちますよ」という図面と模型を通して、時間を予測する仕事なんです。「こういうものが建つので、時間とお金をかけて、一緒に創りませんか?」っていうことが仕事なんですよね。

僕が、ガウディに共感する部分というのは、自分で予測をしておきながら、「もしかしたら、こうなんじゃないかな?」という、創造のプロセスにおいて、いつでも「より良い状態を探そうとする」ところなんです。何かを創る、ということは、完成という終止符があるわけですよね。でも、自分の中での葛藤がなくなったら、創っている喜びがイージーになってしまう。葛藤の中でガウディが常にストイックさを持って、現場に出向いて考えを強めていく、やり直しも辞さないような熱い思いは十分に建築に宿っていくし、それは建築のどこをつくるにしても手を抜かないというところにあるのかもしれない、そこの部分に僕は建築家として、一番共感しますね。

 


サグラダファミリア——

批判的なことになってしまうけど、サグラダファミリアに関してそれが最も感じられるのが、ガウディが生きていたときの生誕の門なんですよね。今回、僕は4度目に訪れて初めて、森のように完成をしている内部の空間を見たんですが、地下に降りたとき、ガウディの模型からのブレイクスルーを感じなかったんです。すごい技術を使って、すごいものを創っている、ということには敬意を払うんだけれど、ガウディの魅力は、「こんなものを創りましょう!」って施主や職人と一緒になってやって、でもいざカンカンカンカン作り始めたら、「いやいや、やっぱりこうした方がいいんじゃないのかな?」ってどんどん変化していくエネルギーにこそあると思うんです。

   

けれど、今できているものは、亡きガウディの靴を誰も履いていないという感じがするんですよね。やっぱり模型が、どこかそのまま大きくなったように見えちゃうというか。それでも十分感動をするんですが、いざ見てみると、ダイレクト過ぎてしまっていて、ガウディの魅力ってもっと人間臭く、ドロドロに複雑にいろいろな想いが、これでもか、これでもか、ってどんどん変化することを怖がらずにやっているなかから生まれていると思うんですよね。

一方、生誕の門を見ると、そのおぞましさというか、怖いくらいなんですよね。マイナスな要素かもしれないけど、きっと当時の作り手も、「わぁ、ガウディ来たよ、また怒られるよ、これやり直せって言われるよ」ってビクビクしたり、真剣に作っている職人たちは、「ここ、こうやって作った方がいいんじゃないか」ってどんどん変えていったりしたと思うんですよね。模型でやるのではなくて、「こうした方がいいな」って最後のタッチを変えるのは現場でしかできないし、その想いみたいなものが、最後のスパイスになる。でも、そのマジックのような最後の調味料が、残念ながらサグラダファミリアの内部空間には感じられなかったんです。

 

 

指揮者としてのガウディ——

 

図面で表せる部分は限定的だから、実物でしか表現できない部分があるんですよね。木を彫ってどんな表面がでるのか、ということは実物でしか分からないものなんです。

音楽も、譜面よりも豊な音楽性は、指揮者が譜面から引き出さなければいけないし、譜面も当然完璧に理解をしていないといけない。だからその譜面と音楽の見えない部分に指揮者が全身全霊で勝負するように、建築家も作曲家である瞬間は最高の譜面を書かなければならないし、現場に出たときは指揮者として、職人らと一緒に自分で作曲した曲をどうしたらさらによく創れるのか、と考えていく部分が必要になってくる。それが、サグラダファミリアで見てみると、やっぱりガウディの不在を強く感じてしまう部分ですね。

  

僕は今回の展覧会のおかげでガウディについて再度勉強をしたんですが、初めて見たときの異様な衝撃を受けた高校時代、建築を勉強するようになってから見た大学時代、そしてベルリンで働くようになってからの3度目と、今回、建築家として独立してからの4度に渡って、サグラダファミリアを見ているんですが、正直なところ、大学時代はズントーやフランク・ゲーリー、ヘルツォーク・ド・ムーロン、ル・コルビュジエ、アルヴァ・アールトに最も共感しているので、ガウディに対しては、どうしても「異端児」という見方で見てしまっていて、「異様なものなんだな」という以上に考えたことがなくて。ベルリンに住むようになって建築家として仕事するようになってから見たときにも、やっぱり現代建築や、ガウディの周りのものには共感をしていたんだけれど、今回、再度ガウディ建築に出逢って、その強い力を改めて感じました。
4日間カサミラの近くのホテルに泊まって毎日サグラダファミリアを見ることで、時間としての蓄積ができたのも、良かったです。同じ建築を連続して何度も見ることによって見えてくるものがあって、今回は異様なものの先にある「建築の骨格」らしきものが見えてきたんです。

「そうか、ゴシック建築のスケールだな」って考えていたときに、ケルンの大聖堂を想像しました。あれだって300年、400年かかってやっと完成した大聖堂なんだから、サグラダファミリアだって、ガウディ一個人によってつくられるのではなくて、大きな記憶の器として建築が代々受け継がれながらつくられていけばいいと思ったんです。それは、決して珍しいことではないのではない、と。

 

 

バルセロナの街と、サグラダファミリア——

 

現代においては、建築が完成することは当然であり、「現場」として生まれる瞬間の赤ちゃんと、ある種「廃墟」のような改修しないといけないところが同居している不思議さがあるな、と思っていたのですが、それが今回バルセロナを歩く中で、この街そのものがそうなんだな、ということにも気がついたんです。ゴシック地区という旧市街地が、バルセロナの街の真ん中にあって、今回は何度も行き来をしたんですが、ピカソ美術館があるゴシック地区は狭い路地で、非合理的なものでもあるんですよね。防犯面でも、インフラにおいても、いろいろなシステムが破綻している旧市街から、合理的な市街地が広がっていっているということは、ある核としての、14、15世紀の城塞としての旧市街地と、現代における近代都市が同居しているとも言えると思うんです。
サグラダファミリアというものに惹き付けられるひとつの魅力というのは、廃墟的な部分と、新しい部分が同居しているというバルセロナという街、そのものと近いからではないかなとも思ったんです。時間性が如実に分かるというのが街に定着するという面においてはすごく大きい。

 

 

井上雄彦とは——

 

井上さんにはいろいろと驚かされました。
僕は高校時代に『週刊ジャンプ』をリアルタイムで読んでいたので、昔から大ファンなんです。僕が処女作として設計をした、内田樹先生の道場兼ご自宅の「凱風館」が完成する少し前くらいに、NHKの『プロフェッショナル』という番組を見ていたら、たまたま井上さんが出演されていて、ご自身でアトリエを構えながら、その下の階にバスケができる体育館のような場所があり、「自分がクリエーションする場所と、身体を解放するバスケがすぐそばにある」と言われてたのを見て、内田先生の「凱風館」の書斎と道場の関係性に似ている!!と勝手に思い込んだ僕は、井上さんに、「大ファンです、実は僕は建築家で、処女作として、こうこうこういう建築を完成させました、誠に勝手ながら井上さんに来て頂き、見てもらえないでしょうか?そして、ぜひ内田先生と僕と鼎談してくれませんか?」ということを手紙に書いたら、「いいですよ!」って言って、わざわざ神戸まで来てくれたんです。それが3年前ですね。

「凱風館」完成してすぐだったんですけど、憧れの井上さんと会い、3人でお話しながら「凱風館」を見てもらうという幸せな時間を過ごし、その後は年賀状を交換したり、実際に本に対談が収録されてから、僕も井上さんのアトリエに本をプレゼントしに行ってバスケをさせてもらったり、というくらいだったんですが、今年の正月ころ、急遽この「公式ナビゲーター」の依頼を受け、「井上さんからの依頼はもちろん喜んで」、と快諾しました。

 

 

特別展 ガウディ×井上雄彦 – シンクロする創造の源泉 -

Takehiko Inoue interprets Gaudi’s Universe


会期:2014年7月12日(土)〜9月7日(日)※会期中無休


会場:森アーツセンターギャラリー(東京・六本木ヒルズ 森タワー 52F)

 

 

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