特別展『ガウディ×井上雄彦』公式ナビゲーター  

建築家 光嶋裕介氏に話しを聞く!!

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特別展「ガウディ×井上雄彦」2014.7.12 – 9.7 公式ナビゲーター  光嶋裕介氏

 

 

一枚も絵がなかった——

 

僕が今回の展覧会をまず面白い、と思ったのは、1ヶ月間もの期間に渡って井上さんがバルセロナに滞在する、と聞いたときだったんです。サグラダファミリアの目の前のアパートに住み、カサミラというガウディの創った空間の中でアトリエを構えて絵を描く、と聞いて、これは絶対に面白い化学反応が生まれるな、という期待したんです。

実際に、僕も最後の一週間にバルセロナまで取材に行ったんです。「特別展では、40枚くらいの描き下ろしを展示します」って聞いていたので、「すごいな、大変だな。バルセロナで1ヶ月、日本に帰ってきて2ヶ月だから、月に10枚、15枚、15枚くらいのペースで描くとなると、カサミラもえらいことになっているんだろうな。」って思ったら、井上さんは、驚くことに、展示する作品としての絵をまだ一枚も描いてなかったんです。

 

 

漫画家としての井上雄彦——

 

井上さんは漫画家なんですよね。ジャンプに『スラムダンク』を連載していたときも、面白ければ、前の方のページに繰り上がり、アンケート結果次第では、面白くないとどんどん後ろにいって連載枠から落ちて、打ち切りになることもあるんですよね。今となっては、『バガボンド』がいつも一番表紙を飾るほど人気マンガですけど、過去には井上さんも連載打ち切りの経験をしており、連載が通るか通らないか、読者がどう読んでくれるか、というギリギリの世界で戦ってきた人だから、『スラムダンク』を通して、「桜木花道が成長していく、こんな物語を描けばみんなが喜んでくれるだろう」と思っているわけではないんですよね。

 

井上さんから話を聞いていても、彼自身が死ぬ程バスケが好きで、自分でも読みたいバスケマンガを描きたいと思ったなかで、『週刊ジャンプ』で連載が生き残ることに必死だから、初期の『スラムダンク』を読むと、ギャグマンガとか、不良マンガのような喧嘩シーンとか、いろんな要素が詰まっていて、とにかく井上さんの「全力投球!」みたいな濃密なマンガになっているんですよね。それを毎週、毎週、死ぬ気でやっていることが何十年も続くことで、体に染み付いていると、「そうだ、ガウディのこれを描こう!」というのではなく、「自分の身体を介して心の中の世界」を描こうとしているんだと思うんです。

 

井上さんとの対談の中で、「作品を描く前のネーム(物語を書き出す初稿)が良くなければ、いくら技巧的に整っていても良いマンガにならない。そんなマンガの命でもある「ネーム」を描くには、自分の心の中がザワザワしていたら絶対だめで、心を安静にして潜っていく」ということを言っていたんです。つまり、ガウディだけでなくって、スペインやバルセロナが自分の内なる世界の中にくっきりと見えるまで、あるいはガウディ自身と同化して、生き生きと見えてくる状態にならないと描かない。そうでないと納得できる水準の絵と出会えないから、彼はバルセロナで作品を描くというアウトプットではなく、自身の内部を整えるインプットに徹したんですよね。

  

 

井上雄彦のバルセロナ生活——

 

会ってみて、すでにスペイン人みたいだと思いました。朝起きて、アパートの前のショップで買い物をして、スーパーでワインを買って、という日々のルーティーンの中でガウディの通ったであろう通勤路をなぞってみたり、建築を見たりしているうちに、自分の中の解像度がどんどん高くなっていく行為のための時間がバルセロナでの1ヶ月だったんだろうな、と。その姿勢と言いますか、真摯なまなざしに、僕は驚きと同時にすごく感動をしました。それこそが彼の作品に宿る強度なんだろうな、と感じました。

 

今回の展覧会のための作品そのものに関しては、まだ僕自身も実際に見ていないし、何も言えません。しかし、われわれの身体が持っているであろう、スイッチやセンサーを解放してくれるような、今まで見たことのないような世界を見せてくれるのではないかと。それは、絵を通して、建築の何か違う部分に光りが当てられたりするのではないか、と思っています。井上さんは建築を描くかわからないし、ガウディをどのように描くかも今のところわかりませんが、人間ガウディをあぶり出すことによって、ガウディの建築がまた違うように見えたり、ガウディという人間とその建築を知ることによって、展覧会を経験した者みんなが、そうか、建築ってこういう風にも考えられるのね、空間って私にとってはこういうものかもね、という具合に新しい発見のきっかけになるのではないか、と思っています。

 

 

特別展 ガウディ×井上雄彦 – シンクロする創造の源泉 -

Takehiko Inoue interprets Gaudi’s Universe


会期:2014年7月12日(土)〜9月7日(日)※会期中無休


会場:森アーツセンターギャラリー(東京・六本木ヒルズ 森タワー 52F)

 

 

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