皆さん60年前にインドネシアで起きた大虐殺を知っていますか?

そして今もその被害者は、加害者達に囲まれながら日常生活を送っている事実を?

 

世界初上映以来 数々の映画賞を受賞、2014年アカデミー賞長編ドキュメンタリー映画賞ノミネートにされるなど、世界中で大絶賛を浴びたドキュメンタリー映画『アクト・オブ・キリング』の続編として、伝えなければならなかったもうひとつの史実がついに映画化された。

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監督声明 - ジョシュア・オッペンハイマー

 「恐怖に強いられた“沈黙”に、耳を傾けよ』

 

『アクト・オブ・キリング』は、我々が恐怖と嘘の上に日常を築き上げるとどうなるかを暴く作品でした。一方『ルック・オブ・サイレンス』は、そのような日常において被害者の立場で暮らすとはどういうことかを探求する作品です。『ルック・オブ・サイレンス』には、両作の起源となる、2004年1月に撮影されたあるシーンが収録されています。2人の元殺人部隊リーダーが、私を北スマトラのヘビ川の川岸に案内し、彼らがいかにしてたった1箇所の川辺で10,500人もの人々を殺害する手助けをしたかを、嬉々として語る場面です。最後には、彼らはポーズを取って記念撮影しました。彼らにとってそのインタビューを収録した日は、ハッピーで記念すべき1日になっていたのです。この人生で最もトラウマの残る日の経験が、私に、対をなす2つの作品を制作することを決意させたのです。

私を震え上がらせたのは虐殺の事実ではなく、今も罪に問われることなく権力を保ち続ける加害者たちが、虐殺を自慢気に語る様子でもありません。それよりもむしろ、私が恐ろしく感じたのは、2人の男がその日初めて会ったにも関わらず、まるで脚本に書かれた台詞を一緒に読んでいるかのように見えたことでした。彼らは2人とも、虐殺について自慢することを、悪いことだとは感じていなかったのです。私は、この「自慢」という行為が、体系的なものであると感じました。

そこで私は、どちらの映画も1965年の出来事、それ自体についての歴史ドキュメンタリーにはしないことを決めました。そうではなく、どちらもこの虐殺の「現在」を探求するものにしよう、と。1本目の映画(後に『アクト・オブ・キリング』として完成)は、勝利をつかんだ加害者たちが、自分を正当化して生きていくために自身の行為を語る様子や、彼らが自分の人間性や社会に対してついた嘘の結果を追う作品。もう1本は、それと同じくらい重要な問いを追求します。50年間も恐怖と沈黙を強いられた社会や、そこに生きる人々の身に、いったい何が起きているのか?という問いです。その映画が『ルック・オブ・サイレンス』になりました。

しかし、虐殺の生存者に関する映画を作ることは、「ワンパターン」という地雷原に足を踏み入れるようなものです。その手の映画のほとんどは、共感しやすい主人公を英雄的に(もしくは聖人のように)描き、観客に「自分は加害者たちとは違うんだ」という間違った安心感を与えようとします。しかし、我々は善人であるという確認のためだけに犠牲者を聖人のように描くことは、我々が自分自身を欺くために犠牲者を利用しているにすぎません。それは犠牲者の経験を侮辱することであり、残虐行為を生き延びることの意味、巨大な暴力に脅かされながら生きることの意味、そして恐怖によって沈黙を強いられることの意味を正しく理解する手助けにはなり得ません。この「ワンパターンの地雷原」の中で正しい方向に進むため、我々は、沈黙というものそれ自体を探求しなければなりませんでした。

その結果として、『ルック・オブ・サイレンス』が恐怖に強いられた沈黙と、その沈黙を破る必要性に関するポエムとなり、同時に、沈黙が破られた時に現れるトラウマについてのポエムにもなっていることを願います。おそらく、この映画は沈黙に対するモニュメントだといえるでしょう。我々がどれだけ、さっさと次に進み、事態から目を背け、他のことを考えたいと願っても、「壊れてしまったものは元には戻らない」ということを、この映画が思い出せてくれるのです。死者を目覚めさせることはできません。我々は立ち止まり、奪われた命を認識し、そのことが生み出した沈黙に、耳を傾けなければならないのです。

 

                    ジョシュア・オッペンハイマー

『ルック・オブ・サイレンス』プレスより

 

 

インドネシア国内で起きた強烈な反応!!

賞賛と脅迫が渦巻くインドネシアで何が起きたのか?

 

前作『アクト・オブ・キリング』のインドネシアでの上映は、最終的には国中で行われ、インターネットでも無料配信されたが、最初は秘密裏に行われていた。一方、『ルック・オブ・サイレンス』のインドネシアでのプレミア上映は2014年11月10日、政府機関である国家人権委員会とジャカルタ芸術振興会の主催により、国内最大の映画館で盛大に行われた。ジャカルタの街中に広告が掲げられ、定員の倍の人たちが押し寄せ、急遽、二回目の上映も決定。アディも質疑応答に登壇し、彼がステージに現れると、10分間もスタンディング・オベーションが鳴り響いた。

そして12月10日、国際人権デーに全国公開。何万人ものインドネシア人が数百箇所の上映会へ足を運んだ。アディの参加した上映会ではどこでも、その勇気にスタンディング・オベーションが巻き起こり、観客たちは、新しい「国家的英雄」が誕生したと騒ぎたてた。主に若い世代の国民が、これまで政府に嘘をつかれてきたことに怒り、アディの堂々とした振る舞いに、真実と和解の姿を見たのだ。

続く3週間、映画は全国34州のうち32州、計116の街で950回上映された。『アクト・オブ・キリング』と『ルック・オブ・サイレンス』両作の舞台になったメダンでも膨大な数の上映会が開かれ、主催者から報告のあった分だけで計53,000人が映画を鑑賞。毎日上映が行われ、一週間に20のペースで新たな上映が決まっていった。

メディアの報道もまた驚異的だった。ヴェネツィア映画祭でのプレミア上映以来、記事の掲載やテレビでのレポートの数は計731。ジャカルタ・グローブ紙の読者投票では、“今年の顔”の第三位に、新大統領と新ジャカルタ州知事(インドネシアの民主革命ムーブメントの立役者)に続き『ルック・オブ・サイレンス』のスタッフが選ばれた。映画は国家的な話題となり、多くの国内メディアが年間ベストに挙げた。これは『アクト・オブ・キリング』では起こらなかったことである。

一方で『ルック・オブ・サイレンス』の圧倒的なインパクトは、大きな反発も招いた。公開の数日前、警察と軍の息がかかった悪党たちが、上映会を攻撃すると脅迫を開始。警察や軍は頻繁に主催者に接近し、このままでは攻撃されると警告し、「暴力を避けるため」に上映を中止するよう求めた。計25箇所の上映会がこれによってキャンセルされた。反対に、この種の検閲に対して怒りの声をあげる人々も現れ、警察に表現の自由を守るよう要求した。警察の責任を追求した多くの記事や発言によると、悪党たちは警察自らが仕込んだものだと指摘されている。国内有数の名門大学や国家人権委員会、フリー・ジャーナリスト連盟やほとんどの良質な国内メディアが、熱心にこの問題を指摘し、内務大臣は、上映をサポートすると公言した。

しかし、東ジャワ警察は映画の検閲を決定。その結果、小規模上映会は認められたものの、一般の映画館では上映禁止命令が下される。この映画が共産主義への同情を呼び起こし、また、主人公が共産主義者の子であるため客観性に欠ける、という間違った理由からだった。実際には、アディの家族の誰一人として共産党員ではなかった。インドネシアの主要紙はこの決定を非難し、「検閲は民主革命の精神に対する裏切りだ」という見出しを掲げた。国家人権委員会は決定が無効で違法だと断言する文書を発行し、引き続き上映をサポートすることを表明している。そしてオッペンハイマー監督らスタッフは今、ジョコウィ大統領に映画を観てもらおうと、彼の側近やサポーターたちの力を借りながら、懸命に働きかけている。

 

60年前何が起きていたのか当事者でもあるデヴィ夫人が語った真実とは!!

映画「アクト・オブ・キリング」トークショーでの映像

 

 

ジョシュア・オッペンハイマー/監督

<バイオグラフィー>

1974年、アメリカ生まれ。ジョシュア・オッペンハイマーは現在、デンマークのコペンハーゲンに拠点を置き、そこで制作会社ファイナル・カット・フォー・リアル社の共同経営者を務める。オッペンハイマーは10年以上にわたり民兵や殺人組織とその犠牲者を追い、政治的な暴力と市民の想像力との関係性を研究してきた。ハーバード大学とロンドン芸術大学セントラル・セント・マーチンズで学び、『アクト・オブ・キリング』(2012)で長編映画デビューを果たした。それ以前の作品に、『The Globalisation Tapes』(2003、クリスティーヌ・シンとの共同プロデュース)、『The Entire History of the Louisiana Purchase』(1997)、『These Places We’ve Learned to Call Home』(1997)、その他多くの短編がある。オッペンハイマーはウェストミニスター大学のInternational Centre for Documentary and Experimental Filmで芸術監督を務める。

<フィルモグラフィー>

・『The Entire History of the Louisiana Purchase』(シカゴ映画祭ゴールド・ヒューゴ賞受賞、テルライド映画祭正式出品、1997年)

・『These Places We Learned to Call Home』(短編、サンフランシスコ映画祭ゴールド・スパイア賞受賞、1997年)

・『SHOW OF FORCE』(短編、2007年)

・『LAND OF ENCHANTMENT』(短編、クリスティーヌ・シンとの共同監督、2001年)

・『The Globalisation Tapes』(クリスティーナ・シンと共同製作、2003年)

・『アクト・オブ・キリング』(ヨーロッパ映画賞、英国アカデミー賞、ベルリン映画祭観客賞ほか多数受賞、2012年)

 

『ルック・オブ・サイレンス』ポスター画像

 映画『ルック・オブ・サイレンス』

2015年7月4日よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開

 

監督:ジョシュア・オッペンハイマー

共同監督:匿名

製作:シーネ・ビュレ・ソーレンセン

製作総指揮:ヴェルナー・ヘルツォーク / エロール・モリス / アンドレ・シンガー

撮影:ラース・スクリー

編集:ニールス・ペー・アンデルセン

録音:ヘンリック・グッゲ・ガーノウ

制作会社:ファイナルカット・フォー・リアル (デンマーク)

配給・トランスフォーマー 

宣伝協力:ムヴィオラ

 

(c) Final Cut for Real Aps, Anonymous, Piraya Film AS, and Making Movies Oy 2014

公式HPwww.los-movie.com

Twitter@los_movie 

FACEBOOK:www.facebook.com/lookofsilence.movie

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