英国最高の巨匠、テート・コレクション待望の大回顧展!

 世界一のコレクションから至高の風景画が一挙上野に!!「ターナー展」

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東京都美術館「ターナー展」2013年10月8日(火)〜12月18日(水)

 

英国最高の巨匠、テート・コレクション待望の大回顧展

《記者発表会》より ゲストトーク  作家・国文学者の林望 氏

 

ジョセフ・マロード・ウィリアム・ターナー(以下 ターナー)の1年後に生まれたジョン・コンスタブル(以下 コンスタブル)は、ターナーと同じくイギリスの代表的な風景画家でありますが、この二人はあらゆる面で対照的な人物として語られています。ターナーはロンドンの床屋の息子で、生活は豊かとは言えませんでした。

一方、コンスタブルは、製粉業者の息子で、裕福な暮らしをして育ちました。ところが、絵に関していえば、ターナーは「早熟の天才」と言われるほど、若いころから実力を認められ、20代のときには、ロイヤルアカデミーの正会員になっているのに対し、コンスタブルは、準会員になったのは43歳、正会員になったのは、晩年の53歳でした。ひとことで言えば、ターナーは売れていましたが、コンスタブルは売れていなかったということになります。

 

他の面で比べてみても、ターナーは都会っこでしたが、コンスタブルは田舎っこでした。そしてターナーは生涯に14万ポンドの財を成したといわれ、コンスタブルは赤貧のうちに亡くなります。そのくらい、あらゆる意味で対照的だったのですが、対照的であった所以は、どのような点であったか考えてみると、ターナーは常に「非日常的な画材」を求めて描き続けたという点が大きくあげられるのではないでしょうか。

 

ターナーは生涯、旅を続けた画家といえます。1775年から1800年までの若い頃は13回の旅をしていますが、外国には一度も行っていません。1801年から1810年までの9回の旅のうち、1回フランス、スイスに行っています。このときが初めての外国でした。そして、1811年から1820年には、8回の旅のうち、2回外国に行き、1820年代には、12回の旅のうち、6回外国、1830年代には、9回の旅のうち、8回外国へ行き、1840年代になると、7回とも全て外国へ行っています。これは、旅が好きだったのではなく、歴史的な風景や、工業的な風景が、ターナーの興味の対象であり、日常の中で観ている風景には、物語がないと思い、物語を探して歩いたからではないでしょうか。

 

一方コンスタブルは、ごくごく一般的な田園風景に神が宿っている、という考えで描き続けているのです。同じ「風景」というものに対して、見方は正反対であったことがわかります。このことが、ターナーとコンスタブルの画家人生を大きく分ける理由だったのではないでしょうか。この時代の絵画は、貴族や、お金持ちの屋敷に飾られました。その際、近くを見渡したらすぐに見ることができるような風景ではなく、伝説や、歴史、文化が背後にあるような絵画、もしくは、見たこともない景色の絵画作品に、やはり需要があったといえます。その結果、コンスタブルは売れず、ターナーは売れたのです。

 

ターナーの風景画を観ていると、どこから描いたのか分からない一種の空想画だということがわかります。ターナーは、遠近法の天才ですから、視覚を変え、様々な角度から描き、遠近法の使い方も実に計画的であったことがわかります。《ヴァティカンから望むローマ、ラ・フォルナリーナを伴って回廊装飾のための絵を準備するラファエロ》を観ると、一枚の絵画の中に、収束点の違う遠近法が3つ取り入れられているのです。つまり、これはパノラマ写真のように、視野を動かしてみると見える風景を、1枚の絵の中に入れてしまっているのです。ですから、実際にヴァティカンのこの場所に立っても、同じ景色は見当たりません。

ターナーは常に、絵の中に、どのようなストーリーがあるか、どのような思想があるか、ということを考え続け、新しい描き方で、新しいものを描き続けた画家でした。一方、私たちが現代、何気ない風景を描くようになったきっかけは、コンスタブルが発見したことだ、と言えるのかもしれません。

 

二人は、まったく同じ時代の、同じ汽車に乗り合わせながらも、ターナーは前向きの席に座り、コンスタブルは、後ろ向きの席に座り、お互い全く違う方向をみながら、近代へ運ばれていったのでは、ないでしょうか。

 

 

 

林 望 氏

1949年東京生まれ。慶應義塾大学卒、同大学院博士課程修了。ケンブリッジ大学客員教授、東京藝術大学助教授を歴任。現在は作家専業。専門は日本書誌学、国文学。『イギリスはおいしい』(文春文庫)で日本エッセイスト・クラブ賞、『林望のイギリス観察辞典』(平凡社)で講談社エッセイ賞、『ケンブリッジ大学所蔵和漢古書総合目録』(ケンブリッジ大学出版)で国際交流奨励賞を受賞。著作に最新刊『謹訳 源氏物語』(祥伝社 全十巻)、『いつも食べたい!』(ちくま文庫)、『旬菜膳語』(文春文庫)。また『謹訳源氏物語』の著者自身による朗読をミュージックバードで毎日放送中。

 

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